渋谷のど真ん中で「Breakin’!」――「True Colors Festival」の開幕を告げる豪華なダンスの応酬

押し寄せるトップダンサーたちのトリック

9月10日、東京・渋谷ストリーム前が、ダンサーたちの発する熱に包まれた。
猛暑日となったこの日、「True Colors Festival」の幕開けとなるイベント「True Colors DANCE~No Limits~」が開催された。多国籍からなる障害者ダンサーで構成されるブレイクダンス・ユニット「ILL-Abilities(イルアビリティーズ)」が、ゲストダンサーたちと繰り広げるダンスバトルがこの日のメインイベントだ。

登場したダンサーはイルアビリティーズの他、ブレイキンのスターチーム「The Floorriorz」や“Shigekix”(半井重幸)、“Ram”(河合来夢)、“Taisuke”(野中泰輔)ら日本が世界に誇るトップダンサーたち。加えて、ダンスユニット「SOCIAL WORKEEERZ」や、ダウン症当事者によるエンターテインメントチーム「LOVE JUNX」から選抜されたブレイクダンスチーム「LJ BREAKERS」も参戦した。

2部構成で実施された本公演は、それぞれ「ショーケース」と呼ばれる曲や振り付けを決めた状態で行うスタイルのダンスと、日本のトップブレイクダンサー達との即興のダンスバトルの2本立て。前後半の間にはイルアビリティーズらによるトークセッションや、聴覚に障害のある人も参加できるダンスワークショップ「CONNECTED」が実施された。

開業まもない渋谷ストリームで繰り広げられるパフォーマンスの応酬に、道行く人々は立ち止まり、ステージ正面の階段を埋めた。舞台上には手話通訳者が立ち、大型モニターには字幕が流れた。舞台袖に設けられた「ゆずりあいエリア」からは車椅子ユーザーや福祉施設の利用者が、白熱するダンスを見守った。

イルアビリティーズのリーダー“Lazylegz(レイジーレッグス)”(ルカ・パトエリ)が、クラッチ(松葉杖)を巧みに使いこなして身体を浮かし、ブラジル出身で悪性腫瘍のため右足を切断した“Samuka(サムカ)”(サミュエル・リマ)が片手片足のみで宙を舞い、左右で足長が異なる“Perninha(ペルニンハ)”(ルーカス・マシャド)は逆立ちのまま繊細な足の動きで魅せた。日本のダンサーたちもハイレベルなトリックで観客を沸かせた。第2部では、2018年にブエノス・アイレスで開催されたユース五輪で金メダルを獲得した“Ram”と銅メダルの“Shigekix”や国内外で50回以上の優勝経験を持つ“Taisuke”といった日本のブレイキンダンス界のホープが、目まぐるしいフットワークの連続技からアクロバティックな姿勢で静止する「フリーズ」を決めた。

ダンサーたちが技を繰り出すたびに、ゲストの“Bboy Katsu1”氏が難易度やポイントをわかりやすく解説。拍車のかかった熱気は止まらず、予定時間を超えてダンサーたちは自身の技を存分に披露し合った。「障害の有無」を感じさせない至高のパフォーマンスがそこにはあった。

共通点は“裾野の広さ”と“ゆらぎ”

第1部、第2部の「ショーケース」に出演した「SOCIAL WORKEEERZ」は、児童・障害者福祉職に就くメンバーを中心に構成されるダンスユニット。2011年から活動を開始し、障害の有無を超えたダンスイベントを数百人規模で開催してきた。

チームを率いる笹本智哉さんは「True Colors DANCE~No Limits~」を振り返ってこう話す。
「障害の有無に関係なく、人々が連帯して混ざり合っていく様子に、可能性を感じました。今回のようなイベントがメインストリームになってほしいと思います。“福祉”や“障害”という言葉がつくと、ネガティブなイメージを想起してしまうこともある。でも“障害”は個人ではなくて社会の側にある。そのことを伝えていきたいです」

これまで数多くのイベントに携わってきた「SOCIAL WORKEEERZ」。多様な人々が共に過ごすインクルーシブな空間づくりをノウハウ化することにも今後取り組んでいくという。そこには通底する信条がある。
「共通点は、“(関わる人の)裾野の広さ”と“ゆらぎ”。『こうじゃないといけない』という決めつけはナシ。違いを楽しむことが大切だと思っています」

違いを楽しむ。その言葉の意図を尋ねると、笹本さんは続けた。
「そんな言葉すら余計に感じるほど、各々の違いを当たり前に受容できる社会になってほしい。それぞれが可能性を見つけていけばいいと思うんです」

「ダンスはハッピーな空間なのに」

軟骨無形成症(低身長症)の当事者として「SOCIAL WORKEEERZ」に所属する西村大樹さんにも話を聞くことができた。
西村さんは、昨年3月にシンガポールで開催された「アジア太平洋障害者芸術祭True Colors Festival」にも出演しており、今回が2度目の参加だ。イルアビリティーズとはシンガポールでも顔を合わせている。

西村さんは「ダンスはハッピーな空間なのに、“障害”が関わってくるとなぜカタくなるんだろう」と話す。
「情報保障などの環境整備は確かに必要です。でもそれはベースとして自然になされるべきもの。このようなイベントが継続的に開催されて、ダンスにとどまらず、同じ環境がアート全体に広がっていけば、と」

西村さんは、前出の笹本さんの「違いを楽しむ」という言葉を引き継ぐようにこう話した。
「“違い”があることを忘れてしまうほど、自然な付き合いができる世界になってほしいと思います。障害があればできないこともある。僕でいえば、激しい動きにはついていけないこともある。でもそこで終わらせるのではなくて、『俺の武器はこれだ』ということを伝えることも、当事者としては必要かなと思って活動しています」

主催者はリスペクトを、出演者は矜持を

リオ2016パラリンピックの閉会式・引き継ぎセレモニーにパフォーマーとして出演した車椅子ダンサーの神原健太さんも、飛び入りでダンスの輪に加わった。
神原さんにとっては、初めての「ブレイキン(=ブレイクダンス)」の場。「今日はブレイクダンスが好きなお客さんが多い。ブレイクダンス寄りの動きを意識しました」と話すように、技の連続をメインにテンポよくトリックを繋いだ。

ダンス中、イルアビリティーズのメンバーであるチリ出身の“Checho(チェチョ)”(セルジオ・カルヴァハル)の技をコピーし、披露したという。
「彼(“Checho”)も喜んでくれて、『僕自身も君にインスパイアされて、新しい技を思いついたよ』と言ってくれた。リップ・サービスだと思うけど、いつかイルアビリティーズで一緒にやろうという言葉が嬉しかったです」

ダンサーとしてのプロ意識を持ち、技の研鑽に余念がない神原さんは、「多様性」を打ち出したイベントの中には違和感を感じるものもあるという。
「障害の有無に関係なく、強みを武器にしている人々に、人はリスペクトしますよね。“障害者”ではなく一人のパフォーマーとして見てほしい」

神原さんは、障害の当事者として舞台に立つ者にも、矜持きょうじは必要だと話す。
「“障害者”という枠で自分を見ている出演者もいる。『障害者なのにこんなステージに立たせてもらって嬉しい』じゃなくて、ステージに立つからには自分にもっと自信を持ってほしいんです。僕自身、ダンサーとしてカッコいいと思ってもらいたいから踊っています。それに付随して、障害者に対するイメージが変わってくれたらいいな、と。それはイルアビリティーズがまさに体現していることですよね」

障害は、個人ではなく社会の側にある。社会の中にある見えない壁を、身体全体を使った表現で打ち破らんとする人たちがいる。「True Colors DANCE~No Limits~」は、そんな人々の思い思いのパフォーマンスに、観る者が喝采を送る空間だった。

Text:Naoto Yoshida
Photo:Ryohei Tomita

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