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第一回アドバイザリーパネルMTGのレポートを公開しました

障害・性・世代・言語・国籍などのあらゆる多様性があふれ、皆が支え合う社会を目指すため、「True Colors Festival」が始まりました。2019年9月10日を皮切りに、2020年7月にかけての約1年間を通して、多彩なパフォーミングアーツの演目を展開していきます。

去る7月19日(金)に、主催である日本財団にて、共催団体である日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS、企画・制作をともに行う株式会社ロフトワーク、株式会社precogのメンバーが、アドバイザリーパネルの面々を囲んでミーティングが開かれました。

 

アドバイザリーパネルには、障害がありながらビジネスやアートの分野で活動する人、あるいはトランスジェンダーといった人も参加。当事者であり、アクセシビリティやイベントづくりの専門家でもある方々からご意見を伺いながら、True Colors Festivalを作り上げるべく、ディスカッションが進められました。

「今回の芸術祭がレガシーになって続く」アドバイザリーパネルからの期待

今回のミーティングでは、5名からなるアドバイザリーパネルが参加。まずは自己紹介を兼ね、今年度の「True Colors Festivalに期待すること」から会話が始まりました。


杉山文野さん

フェンシングの元女子日本代表という経歴を持つ杉山文野さんは、トランスジェンダーとして日本最大のLGBTプライドパレードである特定非営利活動法人東京レインボープライド共同代表理事に就任。また、日本初となる渋谷区・同性パートナーシップ条例制定に携わり、渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員も務めています。

杉山 まだ、自分事にできていない人に興味や関心をもってもらうこと。そして、芸術祭を開催したことが一つのレガシーとなって、2020年以降につながっていくことを期待しています。


Julia Olsonさん

この日、Skypeで参加した方もいらっしゃいます。19歳の時、交通事故によって、ほぼ全身の自由を奪われたというJulia Olson(ジュリア・オルソン)さんは、継続的なリハビリによって医師の予測を覆すほどの回復を見せながら今もリハビリを続けています。現在は電動車いすを使用しながら、都内の外資系金融会社に勤務。自身の経験をもとに障害に対する偏見をなくし、インクルーシブの意識を高めることに力を注いでいます。

ジュリア True Colors Festivalは、色んな人が同じところで楽しめ、何よりも『自分がウェルカムだと感じられる場』になると良いと思っています。

加藤悠二さん

オープンリー・ゲイのアーティストである加藤悠二さんは、国際基督教大学ジェンダー研究センターの職員や、企業を対象としたLGBT研修を行うNPO職員としての経験も持っています。研究会の開催、学内外からの相談対応・教職員向け研修など実施してきました。

加藤 今回は1年間をかけたイベントで、内容もさまざまあると聞いています。多様な人々が多様に楽しめる場になることを期待しますし、私の観点から手伝えることがあれば嬉しいですね。

林建太さん

介護福祉士として身体障害者のサポートに携わったことから始まり、2012年に「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」を発足させ、代表を務める林建太さん。全国の美術館や学校で、視覚障害者と晴眼者が言葉を介して共に美術を鑑賞するワークショップを行っています。

 人はみな、“私は固有である”というアイデンティティと、“私は誰でもない”という匿名性をスイッチしながら生きています。それをスイッチしにくいのが障害者を含めたマイノリティの人々の現状。個別の人々への発信と、マスに向けた発信とを、意識して使い分けていくのが大事だと思います。

廣川麻子さん

聴覚障害の当事者である廣川麻子さんは、1994年に「日本ろう者劇団」へ入団。2009年から1年間ダスキン障害者リーダー育成海外派遣事業第29期生として、ろう者や障害を持つアーティストなどで構成されるイギリスの組織「Graeae Theatre Company」でも研修を受けました。第66回芸術選奨文部科学大臣新人賞を得たほか、2018年からは東京大学先端科学技術研究センター当事者研究分野(熊谷研究室)のユーザーリサーチャーとして観劇支援の研究に取り組んでいます。

廣川 聴覚障害者は手話通訳者がいないと情報が入りにくい点で、言語的に弱い立場にいます。しかし、イギリス留学で、一般劇団の公演でも字幕や手話がついているのを見て、アクセシビリティ環境を整備する活動を志すようになりました。今回は聴覚障害者の立場から、障害者がアクセシビリティの面で参加しにくい状況を変えていけるようなイベント運営を期待しています。

自身の体験や障害との向き合い方から生まれた観点、多様な人々との関わり合いから感じる認識の相違、社会的な整備が進んでいない課題など、自己紹介の挨拶からもすでにイベント開催にあたっての検討事項が浮き彫りになっていきました。

言葉の解像度を上げる。使い方ひとつで「思慮」が見えてくる

続いて行われた開催計画をめぐるディスカッションでも、さまざまな視点からの意見が交わされていきます。

日本財団側で用意した「True Colors Festival開催計画書」に沿って、開催の背景や目的、あるいは昨年度までの目的からの変化などが議題に挙がります。その最中で、林さんは「使われている単語や意味の解像度を上げよう」と意見を述べます。仮に言葉を省いているのであれば、それらの「こぼれ落ちているもの」へ配慮がなされているのかを示していくのが大事だといいます。

「True Colors Festival開催計画書」をもとに、議論が繰り広げられました。

 たとえば「障害」という言葉も概念としては広すぎます。障害は「個人に属する障害」と「社会に属する障害」と大きく分かれる。私たちは言葉の解像度を上げ、それらへの理解があることを表明したほうがいいでしょう。

杉山 「性別」という書き方では「性自認」や「性的指向」が含まれず、LGBTなどの多様なセクシュアリティを包括した言い方ではありません。もし、短くするのであれば「性」だけにする必要があるように思いますが、自分たちの考えをあえて見せることを意識するのならば、長い言葉で盛り込むのも一案です。

加藤 国連などの議論を受け、「性的特徴」や「性表現」といった概念も取り入れるべき、という指摘もあります。また例えば、国際基督教大学の人権侵害防止対策基本方針では、「ジェンダー、人種、国籍、出自、宗教、年齢、性的指向、性自認、性表現、障がいなどに基づく差別や、地位・立場を利用したあらゆるハラスメントは、形態の如何に関わらず許しません」と表現されています。「たくさん列挙されたら、ややこしくて分かりづらい」という意見もあるかもしれませんが、マイノリティの側からすれば、「きちんと書いてもらわなければ、本当に配慮をする意志があるのか、差別をなくしていこうという問題意識があるのかがわからない、伝わってこない」んです。誰に理解してもらいたいのかを意識しながら、丁寧に表現を選んでいくことが大事だと思います。

ジュリア 一例として、アメリカでは「#WhenICallMyselfDisabled」というハッシュタグが流行っています。和訳すると「障害者という言葉を自分のものにする」ですね。つまり、周囲が気にすることによって「障害=悪いこと」のようにしているのではないか、という視点への問いかけなんですね。言葉遣い一つで、良くない目を向けられる可能性もありえます。

それぞれの視点から見た「言葉」の重要性は、ウェブサイトや広告コピーだけでなく、その事前資料である開催計画書をとっても、主催側のスタンスが表れるものだと、アドバイザリーパネルからは次々に意見が寄せられました。一方で、杉山さんは自身が携わる東京レインボープライドの運営経験をもとに、「多様さ」の取り扱いについて持論を伝えます。

杉山 東京レインボープライドを進める上で大切にしているのが、「多様な人たちの多様な意見は、多様すぎてまとまらない」という前提に立つことです。そこで、理想と現実を見つめながらも「実現できる最大公約数」をどこに置くのか、僕らもいつも苦しみながら決めています。「マイノリティの声を大事に」と言いながら、最終的に多数決で決めるようなジレンマもある。今後も様々な議題について、現実的に致し方ないのを理解しているのか、その視点がないままで決めているのかには、大きな違いがあります。東京レインボープライドではパレードの他にも小規模イベントを併催して、「小さな声」を取りこぼさないような二重構造にしています。True Colors Festivalも、そういった視点で考えていくのも一つです。

当事者団体との協力で、より配慮のあるイベント運営を

その後も活発な意見が交わされる中で、会場の設計について、聴覚障害者の立場から伝える廣川さんからは、当事者である人々をより交えて議論してはどうか、という声が上がりました。

廣川 会場については、アクセシビリティの観点からも、たとえば「全国規模のろう者の当事者団体」である全日本ろう連盟のような組織にも、後援といった形で関わっていただくのが良いのではないでしょうか。

加藤 開催概要などを見ても当事者団体の名前がないのは、不安や不信につながり得る要素だと思います。先ほどの「言葉」の取り扱いに関する議論も同様ですが、当事者が携わっていることが、後援などの座組においても見えてこない。いまは企業による「後援」だけが見えていますが、「協力」などの形で当事者団体や支援団体に加わってもらうのもいいかもしれません。

今回のディスカッションからは、準備や計画において不足していた視点を早期に発見できただけでなく、より広く多様な人々を受け入れるために成すべきことの課題が見えてきました。さまざまな思いを持って生き、また向き合っている当事者たち。たとえ、マイノリティとくくられるなかにも、一つひとつの個性と考え方があり、それらへの思慮があることをいかに表現していくのか。このMTGを受けて、実際にキャッチコピーの変更やアクセシビリティの強化が決定しました。

アドバイザリーパネルとのディスカッションをはじめ、様々な意見を取り入れながらTrue Colors Festivalをアップデートしていかねばならないと、参加メンバーは思いを新たにしました。今後も当事者を含めた皆様からの声をもとに、“超ダイバーシティ芸術祭”と銘打つ今回のイベントを成功へ導くべく、邁進していきます。

アドバイザリーボードのみなさんとTrue Colors Festival事務局メンバー

 

Text:Kento Hasegawa
Photo:Ryo Nakagome

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障害あるなしに関係なく、インクルーシブな社会

SOCIAL WORKEEERZ 設立者・代表/プロデューサー

TOMOYA